chapter 32~ chapter 32 “裏切り” ~ 彼とは相変わらずバランスが取れなかった。 彼氏だ、と思うと期待しすぎてしまう。彼氏なのに、と思ってしまう。 だったら彼氏なんか居ない方がいい。 期待して叶わないなら、最初から期待なんかしなければいい。 別れたい、と言うと彼は反対したが「期待しすぎるから彼氏でいないで欲しいの」 そう言うと少し納得して「じゃぁとりあえず友達に戻ろう」と言った。 そうだ、友達だったらそこまで期待はしない。 嫌いになった訳じゃなかったから、彼の申し出は嬉しかった。 バランスを取る為に今までより少し距離を置いてみよう、という事だと思った。 そういう付き合いかたなら、上手く出来るかもしれない。 でもその数ヵ月後、彼は例の先輩と結婚する事になった。 会社の朝礼で「結婚する事になりました」と照れくさそうに挨拶する彼と彼女を見て私は驚いていた。 社員全員が拍手をして「おめでとう」と言う中、私も一緒に手を叩いていなければならなかった。 “よりによって、あの先輩と、結婚!?” いったいいつから、そんな事になっていたのだろう。 裏切られた気持ちになったが、すでに別れている以上、文句を言える立場ではなかった。 それでも私は元気だった。彼と別れてから異常に元気。 毎日毎日、今日は誰々と何処へ遊びに行く、と予定を組み入れ 仕事の後で誰かと遊び歩いてから自分のアパートに帰る。 逆に仕事の後、誰とも会わずにアパートに帰った日は眠れなかった。 彼と付き合ってた事を知っていた会社の友達にも、こう言われていた。 「彼が結婚するって聞いてへこむと思ったけど意外と真琴は元気だね」 「そうでしょう~?私も自分で結構平気なもんだなって思って驚いてる。」 私ってバイタリティーあるじゃん。と思い、遊び歩く日々を本当に“楽しい”と満足していた。 1人でいると眠れない。遊び歩いてくたくたに疲れるまでは眠れない。 1人で居るのが嫌で毎日一緒に寝てくれる人が欲しかった。 ただそばにいて欲しいだけなのに、男の子は仲良くなるとすぐに付き合おうと言う。 彼女になるのはまだ嫌だ、と言うと男の子は会ってくれなくなった。 “本当に私が好きなら、彼女じゃなくても遊んでいられるはずじゃないの? 結局、私を好きなんじゃなくて、彼女が欲しいだけなんだ。誰でもいいんだ。” 好きになれるかも、と思うのに、好きになりきる前に離れて行った。 私が気持ちを許す勇気を持つ前に皆、私から立ち去って行った。 “結局消えるのなら、最初から手を伸ばしてこないで!” 寂しくて寂しくて、今にも壊れそうだったのにそれでも何故か、 私は本当に今、元気でとても楽しいんだと思い込んでいた。 ◆chapter 32について(日記) へ ◆chapter 33 へ |